『リーダーシップ論』と火守り:炎を守る人が組織を導く

薪ストーブ

1. 炎を守るというリーダーの原点

薪ストーブの前に座っていると、不思議と「炎」という存在が人を惹きつける理由が見えてきます。炎は放っておけば消えてしまい、手を抜けばすぐ冷たくなる。しかし、手をかけすぎても煙が充満したり、薪が無駄に燃え尽きたりする。

これは、まさに「組織」や「チーム」と同じです。
リーダーの役割とは、炎を絶やさず、燃えすぎず、適度な熱量を保つ“火守り”のような存在になること。

古代から「火」は文明の中心でした。
家族や共同体を温め、暗闇を照らし、食を与え、生命を守るもの。リーダーとは、その火を管理し、次世代へ受け継ぐ人のことを指します。
リーダーシップ論の源流にある「奉仕」と「責任」は、この火守りの姿勢に近いのです。


2. 「火守り」とは何をする人か

薪ストーブの火守りの仕事を思い出してみましょう。
朝一番に火を起こし、薪を選び、空気を調整し、煙の流れを読む。夜には火を静かに落とし、灰を掃除し、翌日のための準備をする。
その一連の流れは、まさに組織のリーダーの日常と重なります。

火守りが怠けると、火は消えます。
リーダーが放任すれば、チームの熱意は冷め、活気が失われます。

反対に、火守りが慌てて薪を次々に放り込めば、炎は荒れ狂い、部屋は煙に包まれる。
リーダーが焦って過度に指示を出したり、統制を強めたりすれば、メンバーの自律性は奪われ、チームの呼吸が乱れるのです。

火守りの仕事は、目立たないけれど最も重要。
誰かが見ていない時間に、静かに温度を調整し、燃え方を見守る。
リーダーとは「炎の状態を感じ取る力」を持つ人なのです。


3. 炎を絶やさない組織づくり

組織にも「火床」があります。
それは、メンバーの情熱・理念・信頼関係といった、目に見えない土台のこと。
火床がしっかりしていれば、少しの風では炎は揺らがない。
しかし、この基盤が崩れていれば、どんなに新しい薪(新事業・新人)を投入しても長くは燃え続けません。

リーダーの仕事は、この「火床」を整えることです。

  • メンバーが安心して発言できる場をつくる
  • ビジョンを共有し、同じ方向を向く
  • 感謝や承認の文化を育てる
  • 定期的に“灰を掻き出す”=停滞や不満を掃除する

炎を絶やさないためには、情熱の循環を保つ必要があります。
それは単なる「モチベーション維持」ではなく、信頼と尊重の空気を保つということです。

良い火守りがいる組織では、誰かが薪をくべる前に、自然と他のメンバーが動く。
炎は共有され、責任も共有されるのです。


4. 炎が強すぎるとき、弱すぎるとき

薪ストーブの炎は、強すぎても弱すぎてもいけません。
組織もまた、バランスを失えば「燃え尽き症候群」か「停滞」に陥ります。

🔥炎が強すぎるとき

過剰な熱量、つまりリーダーが熱くなりすぎると、周囲がついていけなくなります。
「リーダーだけが燃えている」状態は、組織の危険信号。
部下のペースや気持ちを無視して進むと、やがて薪(人材)は乾ききり、折れてしまう。

火守りの心得は、風を調整すること
酸素=自由と裁量を適度に与えながら、チームの炎が穏やかに燃えるように導く。

🔥炎が弱すぎるとき

逆に、火が弱いときはリーダーの役割が試されます。
くすぶった薪をどう再燃させるか。
そのためには、「小さな火種」を見逃さない観察力が大切です。

小さな成功、笑顔、挑戦の兆し。
それを見つけて言葉をかけ、風を送り、再び熱を戻す。
リーダーとは、火を“作る人”ではなく、“引き出す人”なのです。


5. 炎を分け与えるというリーダーシップ

本当の火守りは、炎を自分のものにしません。
炎は共有されるものであり、独占すればすぐに冷えるからです。

優れたリーダーも同じです。
自分の情熱やビジョンをメンバーに“分け与える”ことで、組織全体の熱が上がる。
その炎は、やがて誰かが次の人に渡す。
リーダーシップは、引き継がれることで強くなるのです。

ここに、**「サーバント・リーダーシップ(奉仕するリーダー)」**の思想が生まれます。
自分が中心になるのではなく、チームが自走する環境を整えること。
そのために、火守りは夜通し火を見張りながら、静かにチームの未来を温める。


6. 結び:静かに燃やし続ける力

炎を眺めていると、「燃やすこと」と「守ること」の違いがわかってきます。
リーダーとは、燃やす人ではなく、守る人。
メンバーが安心して火をくべられるよう、場を整え、風を読む人。

炎を守ることは、地味で報われにくい仕事かもしれません。
しかし、どんなに寒い夜でも、一人の火守りがいれば、全員が暖かく眠れる。

これが、リーダーシップ論の根底にある「温もりの哲学」です。
リーダーとは、組織の中で最も静かに、そして最も長く燃え続ける人なのです。


🪵まとめ

  • リーダーは「火守り」である
  • 炎=組織の熱意・信頼・文化
  • 炎を絶やさないためには、手を抜かず、焦らず、見守る
  • 炎は共有されるもの、独占しては冷える
  • 静かに燃やし続けることこそ、真のリーダーシップ


あなたの組織の炎は、今、どんな色で燃えていますか?
その火を守る火守りは、あなた自身かもしれません。

タイトルとURLをコピーしました