「乾燥薪を使いましょう」「含水率は20%以下が理想です」
薪ストーブの世界では、何度も耳にするこの言葉。しかし──
なぜ20%なのか?
19%と30%で、何がそんなに違うのか?
この記事では、数値の暗記では終わらせず、「炎がどう変わるのか」という視点から、乾燥薪の本質を解説します。
1. 乾燥薪とは「水を燃やさない薪」である
乾燥薪とは、単に「よく乾いた薪」ではありません。
燃焼時に、余計な水分を蒸発させるエネルギーを奪われない薪のことです。
薪が燃えるとき、実は最初に起きているのは
🔥「木を燃やす」
ではなく
💧「水を沸かす」
という現象です。
含水率が高い薪ほど、
- 火力が立ち上がらない
- 炎が弱く、くすぶる
- 黒煙や臭いが出る
これはすべて、燃焼エネルギーが水の蒸発に奪われているからです。
2. 含水率20%以下とは、どういう状態か?
含水率20%とは、薪の重さのうち
約5分の1が水分である状態を指します。
ここで重要なのは、
👉「完全に乾いている」わけではない
という点です。
木材の内部には、
- 自由水(抜けやすい水)
- 結合水(細胞壁に結びついた水)
があり、自然乾燥では0%にはならないのが普通です。
なぜ20%が“境界線”なのか
この20%を下回ると、
- 着火が安定する
- 炎が明るくなる
- 薪が「音を立てずに」燃える
- ガラスが汚れにくくなる
という明確な変化が起こります。
これは、燃焼が「水分処理」から「本来の木材燃焼」に切り替わるラインだからです。
3. 含水率30%と20%は、別物の薪
数字上はたった10%の違い。
しかし体感では、別の燃料と言っていい差があります。
含水率30%前後の薪
- 火を入れても、すぐに勢いが出ない
- 薪の端から泡や湯気が出る
- 炎がオレンジではなく、暗い
- スス・タールが出やすい
含水率20%以下の薪
- 着火後すぐに炎が立つ
- パチパチ音が少ない
- 炎が明るく、透明感がある
- 熱が「前に」出る
これは効率の話ではなく、
炎の質そのものの違いです。
4. 乾燥薪がストーブを守る理由
乾燥薪を使うことは、
快適さだけでなく安全と寿命にも直結します。
含水率が高い薪が引き起こす問題
- 煙突内にタール(クレオソート)が付着
- 煙突火災のリスク増加
- ストーブ内部の腐食
- ガラス汚れの慢性化
一方、乾燥薪は
- 煙が少ない
- 排気温度が安定
- 煙突が汚れにくい
つまり、
含水率20%以下は「安全基準」でもあるのです。
5. 「乾いて見える薪」が危険な理由
見た目が
- 軽い
- 表面が割れている
- 色が白っぽい
これだけでは、乾燥薪とは言えません。
特に注意すべきは
- 玉切りしただけで割っていない薪
- 雨ざらしで風通しが悪い環境
これらは内部に水を抱えたままです。
👉 重要なのは
割った直後の断面で含水率を測ること
これが、本当に乾燥しているかどうかの判断基準です。
6. 含水率20%以下がもたらす“余裕”
乾燥薪を使い始めると、
薪ストーブとの付き合い方が変わります。
- 火を起こすのに焦らなくなる
- 空気調整が素直に効く
- 炎を見る時間が増える
- ストーブに「信頼」が生まれる
これは効率や燃費の話ではなく、
精神的な余裕の話です。
まとめ|乾燥薪とは「炎を信じられる薪」
乾燥薪とは、
🔥 炎の力を、余計な仕事に使わせない薪
含水率20%以下とは、
🔥 ストーブと人が、安心して向き合えるライン
数字を守ることが目的ではありません。
炎が素直に応えてくれるかどうか
それこそが、乾燥薪の本当の意味です。


