はじめに
薪ストーブを使っていると煙突の接続部や煙突の下側から黒褐色や茶褐色の「タールのような液体」が垂れてくることがあります。
見た目は油やタールに似ているため「薪から油が出ているのでは?」と考えることもありますが薪ストーブの煙突内部では木材を燃焼させたときに生じる煙や燃焼生成物が冷却され煙突内面に凝縮・付着することがあります。
EPAは木材を燃やした際の燃焼副生成物が比較的冷たい煙突内で凝縮して煙突内壁に付着したものをクレオソートと説明しています。
クレオソートは黒色または褐色でタール状、粘着性のある状態になる場合があります。
そのため煙突からタール状の液体が出てきた場合は単なる汚れとして片付けず薪の乾燥状態、燃焼状態、煙突の温度、煙突内部の汚れや詰まりなどを確認することが重要です。
この記事でわかること
- 煙突から垂れるタール状の液体とは何か
- クレオソートが発生する仕組み
- 湿った薪とクレオソートの関係
- 空気を絞りすぎることとの関係
- 冷たい煙突でクレオソートが増えやすい理由
- 二重断熱煙突が使われる理由
- 液体が出たときに確認したいポイント
- 煙突掃除や点検が重要な理由
結論
煙突から黒色・褐色のタール状液体が垂れてきた場合、煙突内部にクレオソートなどの燃焼生成物が凝縮・付着している可能性があります。
クレオソートの形成には主に次のような条件が関係します。
- 湿った薪を燃やす
- 燃焼に必要な空気が不足する
- 低温で燃焼を続ける
- 煙突内の排ガスが冷えやすい
EPAやCSIAも湿った薪、空気供給の制限、通常より低い煙突温度などをクレオソート形成を促す条件として挙げています。
液体が確認された場合は薪の状態だけを見るのではなく燃焼状態と煙突全体を確認することが必要です。
煙突から出てくる「タールのような液体」とは?
薪を燃やすと煙、水蒸気、ガス、未燃焼の木材粒子、炭化水素、タール状物質などさまざまな燃焼生成物が発生します。
これらが煙突を上昇するとき煙突内部が十分に暖まっていなければ燃焼生成物の一部が冷却され煙突内壁に凝縮して付着します。
CSIAはクレオソートについて、黒色または褐色で、固いもの、粉状のもの、タール状で粘着性のあるもの、光沢のある硬いものなど、さまざまな状態があると説明しています。
そのため、煙突から出てきた液体が「タールのように見える」場合、クレオソートを含む燃焼生成物である可能性があります。
ただし、見た目だけで液体の成分を断定することはできません。
雨水や結露、煙突内部の汚れが混ざった液体など別の可能性もあります。
クレオソートはなぜできるのか?
クレオソートは煙が冷たい煙突内を通過するときに燃焼生成物が凝縮し煙突内壁に付着することで形成されます。
つまり、単純に「薪を燃やしたからできる」というだけではありません。
重要なのは
どのような薪を燃やしたか
そして
どのような燃焼状態で煙突を通過したか
という点です。
特に、湿った薪、空気不足、低温燃焼、煙突の冷却などが重なるとクレオソートが形成されやすい条件になります。
湿った薪・低温燃焼・空気不足は一つの問題として考える
クレオソートの原因を考えるとき「湿った薪」「空気の絞りすぎ」「低温燃焼」を別々の問題として扱うより燃焼状態全体の問題として考えると分かりやすくなります。
湿った薪
水分を多く含んだ薪を燃やすと薪に含まれる水分を蒸発させるために熱が使われます。
EPAは乾燥した薪を使用することを推奨しており含水率20%以下を一つの目安として示しています。
湿った薪は煙を増やしやすく熱の損失にもつながります。
空気不足
燃焼に必要な空気が不足すると燃焼が不完全になり煙の発生やクレオソート形成につながることがあります。
EPAも空気供給が制限されることをクレオソート形成の条件の一つとして挙げています。
低温燃焼
火を弱く保つために空気を絞り続けると燃焼温度が低くなり煙が多くなる場合があります。
その煙が冷えた煙突を通過すると燃焼生成物が凝縮しやすくなります。
したがって
湿った薪 → 煙が増える → 低温の煙突を通過する → 燃焼生成物が凝縮する
という条件が重なることがクレオソート形成を考えるうえで重要になります。
煙突が冷たいとなぜ付着しやすいのか?
煙突内部を通る排ガスは煙突を上昇する途中で冷却されます。
煙突内部の温度が低いほど燃焼生成物が凝縮しやすくなります。
環境省の「木質バイオマスストーブ環境ガイドライン」でも排ガス温度が低下すると煙突内側にすすやタールが付着しやすくなると説明されています。
特に屋外の金属製単管煙突では排ガスが冷却されやすいため断熱された煙突が望ましいとされています。
つまりクレオソートの問題は薪だけではありません。
薪の状態と燃焼状態、そして煙突の温度を合わせて考える必要があります。
二重断熱煙突が使われる理由
薪ストーブでは煙突から排ガスをスムーズに排出することが重要です。
煙突が冷えすぎると排ガス温度が低下しすすやタールが付着しやすくなります。
環境省の資料では屋外や2階部分などでは排ガス温度をできるだけ高く保つため断熱されたタイプの煙突が望ましいとされています。
二重断熱煙突は煙突内部を通る排ガスが外気によって過度に冷却されることを抑えるために使用されます。
ただし、煙突の仕様はストーブの機種や設置条件によって異なるため実際の設置・交換ではストーブメーカーや煙突メーカーの指定仕様に従うことが基本です。
煙突から液体が出たら、まず「どこから出ているか」を確認する
タール状の液体を発見した場合、最初に確認したいのが発生場所です。
例えば
- 煙突の接続部分
- 煙突の下部
- 煙突の曲がり部分
- 屋根を貫通している周辺
- 煙突トップ付近
などがあります。
発生場所によって確認すべき内容が変わります。
特に屋根を貫通する部分などでは雨水の侵入が関係している可能性もあります。
したがって黒い液体だから必ずクレオソート、とは判断しないことが重要です。
液体が出たときに確認したい4つのポイント
① 薪の乾燥状態
まず確認したいのが薪の含水率です。
EPAは乾燥した薪を使用し含水率20%以下を目安としています。
薪を割った内部を測定できる含水率計を使用すると状態を確認しやすくなります。
ただし、20%という数値はEPAが示す目安であり、すべての薪ストーブに共通する絶対的な基準という意味ではありません。
使用している薪ストーブの取扱説明書がある場合はその指示を優先します。
② 燃焼状態
薪を入れた後、火が十分に燃えない状態が長く続いていないか確認します。
EPAはくすぶるような燃焼よりも適切な空気供給による十分な燃焼を推奨しています。
③ 煙突の状態
煙突内部にすすやクレオソートがどの程度付着しているのか確認します。
外側から見ただけでは内部の状態が分からないため煙突掃除や点検の際に確認することが重要です。
④ 雨水や結露の可能性
煙突トップや屋根貫通部から水が侵入していないかも確認します。
タール状の汚れと水が混ざることで黒褐色の液体として現れる可能性もあるためです。
煙突掃除を先延ばしにしない
クレオソートは可燃性のある物質です。
EPAは煙突内にクレオソートが蓄積すると煙突火災につながる可能性があると説明しています。
そのため、煙突からタール状の液体が出てきた場合には単に外側を拭くだけではなく煙突内部の状態を確認することが重要です。
CSIAは硬いクレオソートや粘着性のあるクレオソートについて通常のブラシだけでは除去が難しい場合があり専門的な機械清掃と煙突システム全体の評価を推奨しています。
「タールが出たから高温で燃やせばいい」とは限らない
タール状の液体を見つけたとき「一度強く燃やせば煙突の汚れが燃えるのでは」と考えることがあります。
しかし、薪ストーブにはそれぞれ適切な運転方法があります。
薪を大量に投入したり取扱説明書の範囲を超えて燃焼させたりすることは適切な対策とはいえません。
EPAも薪ストーブの運転についてはメーカーの指示に従うことを基本としています。
タール状の液体が確認された場合は無理に燃焼温度を上げるのではなく薪・燃焼・煙突の状態を確認し必要に応じて点検や清掃を行うことが重要です。
煙突からタール状の液体が出る状態を放置すると?
クレオソートが煙突内部に蓄積すると煙道の状態に影響するだけでなく可燃性の堆積物が増えることになります。
EPAやCSIAはいずれも十分な量のクレオソートが蓄積し煙道内温度が高くなると煙突火災につながる可能性があると説明しています。
したがって煙突からタール状の液体が出てきた場合は
「少量だから大丈夫」
と判断して放置するのではなく煙突内部を確認するきっかけとして考えることが重要です。
普段からできる予防
クレオソートの形成を抑えるためには普段の薪ストーブの使い方も重要です。
基本となるのは
- 十分に乾燥した薪を使う
- ストーブの取扱説明書に従って運転する
- 必要な燃焼空気を確保する
- 長時間のくすぶり燃焼を避ける
- 煙突を定期的に点検・清掃する
- 煙突が過度に冷却される構造になっていないか確認する
といった点です。
EPAは乾燥した薪の使用、十分な空気供給、適切な燃焼、煙突やストーブの定期的な点検・メンテナンスを推奨しています。
また、EPAの資料では薪を割って積み、雨や雪から保護しながら乾燥させる方法が紹介されています。
煙突から液体が出たときの考え方
煙突からタールのような液体が垂れてきた場合、重要なのは「液体そのもの」だけを見ることではありません。
確認するべきなのは
薪は十分に乾燥しているか
燃焼時に煙が多く出ていないか
空気を絞りすぎていないか
煙突が冷えやすい状態になっていないか
煙突内部にすすやクレオソートが蓄積していないか
という点です。
これらはそれぞれ独立した問題ではなく互いに関係しています。
特に、湿った薪と不十分な燃焼、冷えた煙突が重なるとクレオソートが形成されやすい条件になります。
まとめ
薪ストーブの煙突から黒褐色や茶褐色のタール状液体が垂れてきた場合、煙突内部でクレオソートなどの燃焼生成物が凝縮している可能性があります。
クレオソートは煙が比較的冷たい煙突を通過する際に燃焼生成物が凝縮し煙突内壁に付着することで形成されます。
その形成には
- 湿った薪
- 空気供給の不足
- 低温燃焼
- 冷えた煙突
などが関係します。
また、タール状の液体が見つかったからといって見た目だけでクレオソートと断定することはできません。
雨水や結露など別の原因も確認する必要があります。
大切なのは液体を拭き取るだけで終わらせないことです。
薪の乾燥状態、燃焼状態、煙突の温度、煙突内部の汚れや詰まりを確認する。
そして必要に応じて煙突の清掃や専門家による点検を行う。
これが煙突からタール状の液体が出てきたときの基本的な考え方です。
参考資料・サイト
米国環境保護庁(EPA)「Frequent Questions about Wood-Burning Appliances」
クレオソートの形成条件、湿った薪、空気供給不足、冷えた煙突、煙突火災との関係について詳しく解説しています。
EPA「Frequent Questions about Wood-Burning Appliances」
米国環境保護庁(EPA)「Energy Efficiency and Your Wood-Burning Appliance」
薪の含水率20%以下、湿った薪による煙の増加、薪の乾燥方法などについて説明しています。
EPA「Energy Efficiency and Your Wood-Burning Appliance」
米国環境保護庁(EPA)「Best Wood-Burning Practices」
乾燥した薪の使用、適切な燃焼、くすぶり燃焼を避けることなど、薪ストーブの基本的な燃焼方法について説明しています。
EPA「Best Wood-Burning Practices」
米国環境保護庁(EPA)「Wood-Burning Installation and Maintenance」
薪ストーブと煙突の点検・メンテナンス、煙突のドラフトや構造、専門業者による点検について説明しています。
EPA「Wood-Burning Installation and Maintenance」
Chimney Safety Institute of America(CSIA)「Preventing Chimney Fires」
クレオソートの種類や性状、煙突内部への付着、クレオソートと煙突火災の関係について解説しています。
CSIA「Preventing Chimney Fires」
環境省「木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン」
排ガス温度と煙突内のすす・タールの付着、煙突の断熱、ドラフトなど、日本の木質バイオマスストーブについて確認できる資料です。
環境省「木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン」
METOS「自分でできる!メンテナンス 薪ストーブの煙突掃除編」
薪ストーブの使用によるすす・木タールの付着、煙突掃除、湿った薪や低温燃焼との関係など、実際のメンテナンスについて解説しています。



