アメリカ人はどんな薪を使っている?|オーク・ヒッコリー・パインなど地域で違う薪事情

世界の薪ストーブ文化

はじめに

アメリカでは現在も薪ストーブや暖炉などを使って薪を暖房用燃料として利用しています。

アメリカといえば広大な森林を持つ国というイメージがありますが実際に使われている薪はアメリカ全土で同じではありません。

東部や中部ではオーク、ヒッコリー、メープル、アッシュなどの広葉樹が薪として利用される一方、西部ではダグラスファー、ウエスタンラーチ、ロッジポールパイン、ポンデローサパインなどの針葉樹も利用されています。

これはアメリカの国土が広く地域によって森林を構成する樹木が大きく異なるためです。

さらにアメリカの薪事情を調べると樹種と同じくらい「薪の乾燥」が重要視されていることが分かります。

米国環境保護庁(EPA)は薪を燃やす際には含水率20%以下の乾燥した薪が最もよいと説明しています。

また、薪を割って地面から離して積み上部を覆いながら通気を確保する方法を推奨しています。

この記事ではアメリカで実際に利用されている代表的な薪の種類とそれぞれの特徴、地域による違い、薪の乾燥方法、アメリカ独特の薪の単位「コード」について詳しく紹介します。

この記事でわかること

  • アメリカで使われている代表的な薪
  • オークやヒッコリーが薪として使われる理由
  • メープルやアッシュなどの薪の特徴
  • 西部でパインやダグラスファーが使われる理由
  • 広葉樹と針葉樹の熱量の違い
  • アメリカで重視されている薪の含水率
  • 薪を乾燥・保管する方法
  • 「コード」と呼ばれるアメリカの薪の単位
  • なぜアメリカでは地元の薪が推奨されているのか

結論

アメリカで使われる薪は地域によって大きく異なります。

東部や中部ではオーク、ヒッコリー、メープル、アッシュ、ローカストなどの広葉樹が代表的です。

一方、西部ではダグラスファー、ウエスタンラーチ、ロッジポールパイン、ポンデローサパインなどの針葉樹も薪として利用されています。

米国農務省森林局(USDA Forest Service)は薪の熱量について密度の高い樹種ほど同じ体積あたりの熱量が大きくなると説明しています。

同資料ではヒッコリーは約28百万BTU/コード、ウエスタンラーチは22.3百万BTU/コード、ダグラスファーは20.6百万BTU/コードとされています。

ただし、薪の性能を決めるのは樹種だけではありません。

EPAは木材は含水率20%以下で燃やすのが最もよいとしており湿った薪は熱効率を下げ煙やクレオソートを増やす原因になると説明しています。

つまりアメリカの薪文化では

「どの木を使うか」
「どの地域で採れた木なのか」
「どれだけ乾燥しているのか」

という三つの要素が重要になります。

アメリカでは薪の種類が地域によって違う

アメリカの薪事情を理解するうえで最初に知っておきたいのが地域差です。

アメリカは国土が非常に広く森林の種類も地域によって異なります。

そのため薪として利用される樹種も地域によって変わります。

米国農務省森林局の資料では東部の代表的な広葉樹としてオークやヒッコリーが挙げられています。

一方、西部の薪としてはウエスタンラーチ、ダグラスファー、ロッジポールパイン、ポンデローサパイン、グランドファー、スプルースなどが紹介されています。

つまり「アメリカ人は○○という薪を使う」と一つに決めることはできません。

その地域に存在する森林資源が薪の種類に大きく影響しています。


オークはアメリカを代表する薪

アメリカの薪について語るとき代表的な樹種の一つがオークです。

オークにはレッドオーク、ホワイトオークなど複数の種類があります。

ニューハンプシャー大学エクステンションでは薪として利用する木としてオーク、メープル、アッシュ、バーチ、ヒッコリーなどを挙げています。

特に薪にする木を選ぶ際には森林の将来的な価値も考慮する必要があると説明しています。

オークが薪として利用される理由の一つが木材の密度です。

USDA Forest Serviceは密度の高い木材ほど同じ体積に多くの木質成分を含むため体積あたりの熱量が高くなると説明しています。

オクラホマ州立大学の資料ではホワイトオークの乾燥薪は1コードあたり24.0~29.1百万BTU、レッドオークは22.1~25.9百万BTUとされています。

このようにオークは暖房用薪として高い燃料価値を持つ樹種の一つです。


ヒッコリーは高い熱量を持つ薪

ヒッコリーもアメリカでよく知られている薪です。

USDA Forest Serviceの資料ではヒッコリーは1コードあたり約28百万BTUの熱量を持つとされています。

資料では東部の密度の高い広葉樹であるヒッコリーやオークは石炭に匹敵する熱量を持つ樹種として説明されています。

オクラホマ州立大学の資料でもシェルバークヒッコリーは25.3~27.7百万BTU/コード、ヒッコリー・バターナットは26.7百万BTU/コードとされています。

このような数値からもヒッコリーが高密度の薪として利用されていることが分かります。


メープルも重要な薪

メープルもアメリカの薪として利用されています。

メープルにはシュガーメープル、レッドメープル、シルバーメープルなどがあります。

オクラホマ州立大学の資料ではシュガーメープルの乾燥薪は23.2~24.0百万BTU/コード、レッドメープルは18.1~20.0百万BTU/コード、シルバーメープルは17.4~19.3百万BTU/コードとされています。

同じ「メープル」という名前でも種類によって熱量に違いがあります。

そのため、薪の種類を比較するときには単純に樹木の名前だけを見るのではなく具体的な樹種を見る必要があります。


アッシュも薪として利用される

アッシュ、つまりトネリコ類も薪として利用されています。

オクラホマ州立大学の資料ではホワイトアッシュは21.6~24.6百万BTU/コード、グリーンアッシュは19.9~21.1百万BTU/コードとされています。

ニューハンプシャー大学エクステンションもアッシュをオーク、メープル、バーチ、ヒッコリーなどとともに薪として利用される樹種として紹介しています。

このように、アメリカ東部などでは複数の広葉樹が薪として利用されています。


ブラックローカストも高い燃料価値を持つ

ブラックローカストも薪として利用される樹種です。

オクラホマ州立大学の資料ではブラックローカストの乾燥薪は23.2~28.3百万BTU/コードとされています。

これは薪としてよく知られているオークやヒッコリーに近い水準です。

樹種による熱量の違いは木材の密度と関係しています。

一般的に木材密度が高いほど同じ体積の中に含まれる木質成分が多くなるため乾燥薪の体積あたりの熱量も大きくなります。


チェリーやウォールナットも使われる

アメリカではチェリーやブラックウォールナットなども薪として利用されています。

オクラホマ州立大学の資料ではブラックチェリーは19.5~20.5百万BTU/コード、ブラックウォールナットは20.0~22.6百万BTU/コードとされています。

オークやヒッコリーほど高い熱量ではありませんが薪として利用できる樹種です。

このようにアメリカの薪文化では非常に多くの樹種が燃料として利用されています。


西部では針葉樹も薪になる

アメリカの薪事情で日本と比較したときに興味深いのが針葉樹の利用です。

アメリカ西部ではダグラスファー、ウエスタンラーチ、ロッジポールパイン、ポンデローサパインなどが薪として利用されています。

USDA Forest Serviceの資料では北東ワシントン地域の代表的な薪についてウエスタンラーチが22.3百万BTU/コード、ダグラスファーが20.6百万BTU/コード、ロッジポールパインが17.5百万BTU/コード、ポンデローサパインが17.1百万BTU/コードとされています。

ここから分かるのは

「針葉樹だから薪に使えない」ということではない

ということです。

地域によって森林に存在する樹種が違うためその地域で入手できる木が薪として利用されています。


薪の熱量は木材の密度と関係する

薪の熱量を比較するとき重要なのが木材の密度です。

オクラホマ州立大学は一般的に比重の高い樹種、つまり木材密度の高い樹種ほど高い熱量を持つと説明しています。

これは一定の体積の中により多くの木質細胞壁が存在するためです。

ただしここで注意したいのが「熱量」と「実際の暖房性能」は完全に同じではないという点です。

薪に含まれる水分や使用する薪ストーブ・暖炉の燃焼効率によって、実際に得られる熱量は変化します。

USDA Forest Serviceも薪の水分量やストーブ・暖炉の効率によって実際の熱量は低下すると説明しています。

そのため薪を選ぶときには樹種だけを見るのではなく乾燥状態も確認する必要があります。


アメリカでは「乾燥した薪」が重要

アメリカの薪文化を理解するうえで非常に重要なのが薪の含水率です。

EPAは木材は含水率20%以下で最もよく燃えると説明しています。

さらにEPAの資料では湿った薪は熱を失わせる煙を発生させる可能性があり十分に乾燥した薪を使用することが重要だとされています。

EPAの水分計に関する資料では乾燥した薪はより熱い火を作りやすく同じ熱量を得るために必要な薪の量を減らせることまた煙やクレオソートの発生を抑えることにつながると説明されています。

したがってアメリカでは「どの樹種か」という問題と同時に「十分に乾燥しているか」が重要になります。


薪は割ってから乾燥させる

薪の乾燥を早めるためには、薪を割ることが重要です。

EPAは薪を直径6インチ以下に割ると乾燥が早くなると説明しています。

また、薪は地面から離して積み、雨や雪から守るために上部を覆う方法を推奨しています。

ただし薪の側面まで完全に覆ってしまうのではなく空気が通る状態を保つことが重要です。

EPAも薪を屋外で地面から離して保管し上部だけを覆うことを推奨しています。

側面まで覆うと湿気がこもる可能性があります。


乾燥期間は針葉樹と広葉樹で違う

EPAの資料では軟木は少なくとも6か月、広葉樹は少なくとも12か月保管するという目安が示されています。

ただし、これはあくまで目安です。

薪の乾燥速度は樹種だけでなく薪の大きさ、割り方、気候、風通し、保管方法などによって変化します。

そのため単純に「1年間置いたから乾燥した」と判断するのではなく含水率を測定することがより確実です。

EPAは薪の含水率を確認する方法として水分計の使用を推奨しています。


アメリカでは「コード」で薪を測る

アメリカの薪文化を語るうえで欠かせないのが「cord(コード)」という単位です。

USDA Forest Serviceによると、1コードは

4フィート × 4フィート × 8フィート

の薪の積み方で128立方フィートです。

つまり薪を購入するときに「1コード」と表示されていれば一定の基準によって薪の体積が示されていることになります。

一方で薪の積み方によって内部の空間量は変わります。

USDA Forest Serviceの資料でも薪の太さ、樹皮、曲がり、節、積み方などによって同じ体積の薪の山でも実際に含まれる木材量が変わることが説明されています。

そのため薪を購入するときには「トラック1台分」などの表現だけでなく実際の量を確認することが重要です。


地元の薪を使うことも推奨されている

アメリカでは薪の産地も重要な問題になっています。

EPAは森林害虫の移動リスクを減らすため地域で伐採された薪を購入して燃やすことを推奨しています。

薪は木材なので内部や樹皮などに害虫が潜んでいる可能性があります。

薪を長距離輸送するとそれまで存在しなかった地域へ森林害虫が移動する可能性があります。

そのため

「地元で採れた薪を使う」

という考え方は薪の輸送距離を短くするだけでなく森林資源を守るという意味でも重要です。


アメリカでは自分の森林から薪を取る人もいる

アメリカでは自分が所有する森林から薪を採取するケースもあります。

ニューハンプシャー大学エクステンションは薪を採取する森林所有者に対して将来の木材価値や森林の多様性、野生生物なども考慮する必要があると説明しています。

同大学は薪に適した木としてオーク、メープル、アッシュ、バーチ、ヒッコリーなどを挙げています。

しかし薪にするために価値の高い木を無計画に伐採するのではなく森林全体を見ながら木を選ぶことが重要だとしています。

このことからもアメリカの薪文化が単なる燃料の確保だけではなく森林管理とも関係していることが分かります。


アメリカの代表的な薪を整理すると

アメリカで利用される代表的な薪を整理すると次のようになります。

東部・中部で代表的な広葉樹

  • オーク
  • ヒッコリー
  • シュガーメープル
  • レッドメープル
  • アッシュ
  • ブラックローカスト
  • バーチ
  • ブラックチェリー
  • ブラックウォールナット

西部などで利用される樹種

  • ウエスタンラーチ
  • ダグラスファー
  • ロッジポールパイン
  • ポンデローサパイン
  • グランドファー
  • スプルース

ただしこれらは「地域ごとに完全に分かれている」という意味ではありません。

森林の種類や土地の条件によってさまざまな樹種が混在しています。


まとめ

アメリカで使われている薪は地域によって大きく異なります。

東部や中部ではオーク、ヒッコリー、メープル、アッシュ、ブラックローカストなどの広葉樹が代表的な薪です。

一方、西部ではダグラスファー、ウエスタンラーチ、ロッジポールパイン、ポンデローサパインなどの針葉樹も薪として利用されています。

オークやヒッコリーなどの密度の高い木材は乾燥した状態で体積あたりの熱量が高くなります。USDA Forest Serviceやオクラホマ州立大学の資料でも樹種によって薪の熱量に明確な違いがあることが示されています。

しかし薪を選ぶうえで重要なのは樹種だけではありません。

EPAは含水率20%以下の乾燥した薪を使用することを推奨しています。

また、薪を割り、地面から離して積み、上部を覆いながら通気を確保する方法を紹介しています。

そしてアメリカでは薪の量を表す「コード」という単位が使われています。

1コードは128立方フィート、4フィート×4フィート×8フィートの体積です。

さらにEPAは森林害虫の移動を防ぐため地元で伐採された薪を購入・利用することも推奨しています。

アメリカの薪文化を調べると「アメリカ人は特定の薪を使っている」という単純な話ではないことが分かります。

その土地にどんな森林があるのか。

どんな木が薪として利用できるのか。

どのように乾燥させるのか。

どこから薪を運んでくるのか。

こうした条件によって実際に使われる薪が決まっています。

アメリカの薪文化は広大な国土と多様な森林環境をそのまま反映しています。

オークやヒッコリーだけでなくダグラスファーやパインまで薪として利用されていることはアメリカの薪文化の大きな特徴です。

そして最も重要なのは樹種の名前だけではありません。

「その土地で手に入る木を、適切に乾燥させ、適切に保管して使う」

という考え方こそがアメリカの薪利用を理解するうえで重要なポイントです。

主な参考資料

  • 米国環境保護庁(U.S. EPA)「Best Wood-Burning Practices」
  • 米国環境保護庁(U.S. EPA)「Energy Efficiency and Your Wood-Burning Appliance」
  • 米国農務省森林局(USDA Forest Service)「Fuel Efficiency & Conservation」
  • オクラホマ州立大学エクステンション「Firewood: Recommendations for using Firewood as an Indoor Heating Source in Oklahoma」
  • ニューハンプシャー大学エクステンション「Cutting Firewood? It’s Not What You Cut」
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