はじめに
薪ストーブを使っていると煙突の方向から「カタカタ」「コトコト」「ゴトゴト」「カンカン」といった音が聞こえることがあります。
特にこれまで聞こえなかった音が突然発生すると「煙突の部品が外れたのではないか」「煙突の中に何か入っているのではないか」「煙突火災ではないか」と心配になることがあります。
煙突から聞こえる音にはいくつかの原因があります。
薪ストーブを焚き始めたときや火を消した後に聞こえる音であれば煙突や金属部材の温度変化による膨張・収縮が関係している場合があります。
一方、風が強いときだけ音がする場合は煙突トップや外部の部材、固定部分などの振動が関係している可能性があります。
また、煙突内部に異物が入っていたりすすやタールなどの堆積物が落下したりすることで音が発生することもあります。
ただし、煙突から聞こえる音の種類だけで原因を断定することはできません。
この記事では「カタカタ」「ゴトゴト」といった煙突の異音について音が発生する主な原因を整理しどのような場合に点検が必要なのかを事実に基づいて解説します。
この記事でわかること
- 煙突から音がする主な原因
- 熱膨張・収縮によって音が発生する仕組み
- 煙突の部材や固定部分が音に関係する場合
- 風によって煙突から音がする理由
- 煙突内部の異物による音
- すす・タールなどの堆積物と音の関係
- 煙突火災で発生する異常音
- 異音がしたときに確認したいポイント
- 専門業者による点検が必要になるケース
結論
煙突から「カタカタ」「ゴトゴト」という音が聞こえてもその音だけで煙突の異常と判断することはできません。
薪ストーブを使用すると煙突の温度が変化します。
金属製の煙突ではその温度変化にともなって部材が膨張・収縮します。
その過程で接続部分などから音が発生することがあります。
また、風によって煙突トップや外部の部材が振動し室内まで音が伝わる場合があります。
さらに、煙突内部に葉や小枝などの異物が入り込んでいたり、すすやタールなどの堆積物が落下したりする場合にも音が発生する可能性があります。
一方で激しい「パチパチ」「バチバチ」という音や、大きな破裂音、異常な煙、煙突の赤熱などが同時に発生している場合は、通常の熱膨張による音とは区別する必要があります。
環境省の資料では煙道火災の兆候として音が発生し、火炎が強くなるにつれて音が大きくなることや、ゆっくり進行する煙道火災でも金属音やひび割れ音が発生する場合があるとされています。
煙突から音がする最も基本的な原因「熱膨張・収縮」
薪ストーブを焚くと煙突の内部を高温の排気が通ります。
そのため、冷えていた煙突は徐々に温度が上昇します。
金属は温度が上昇すると膨張し温度が低下すると収縮します。
煙突が温まるときと冷えるときには煙突を構成する金属部材の寸法がわずかに変化します。
このとき、部材同士が接触していた部分や固定されている部分などで動きが生じると「カチッ」「カン」「パキッ」「コトッ」といった音が発生することがあります。
このタイプの音は特に次のタイミングで発生しやすくなります。
- 薪ストーブの焚き始め
- 煙突が急速に温まっているとき
- 燃焼状態が変化したとき
- 火を弱めたとき
- 薪ストーブの消火後
- 煙突が冷えていくとき
したがって薪ストーブの運転と音の発生が連動しているかは、原因を判断するうえで重要な情報になります。
「カタカタ」「ゴトゴト」につながる煙突部材と固定部分
煙突は一本の金属管だけで構成されているわけではありません。
設置方法によって異なりますが複数の煙突部材、接続部、支持金具、煙突トップなどによって構成されています。
そのため、異音が発生した場合には煙突のどこから音が出ているのかを考える必要があります。
たとえば、煙突本体ではなく屋根上の煙突トップや支持部材などが振動している可能性もあります。
特に
「薪ストーブを焚いていないときにも音がする」
「風が強いときだけ音がする」
という場合には燃焼による熱ではなく、煙突外部の部材や固定部分の振動が関係している可能性があります。
煙突に緩み、変形、損傷などがある場合は、安全性にも関係するため、音だけを消そうとするのではなく、施工状態を確認する必要があります。
屋根上など高所の煙突を確認する場合は転落の危険があるため、無理に自分で確認せず専門業者に点検を依頼する方法があります。
風が強い日に「ゴトゴト」する場合
煙突は屋根の上に突き出して設置されるため風の影響を受けます。
特に煙突トップは屋外に露出しているため風が直接当たります。
風によって煙突トップや周辺部材が振動するとその振動が煙突を通じて室内まで伝わり「カタカタ」「ゴトゴト」という音として聞こえる場合があります。
この場合、音と風との関係を見ることが重要です。
たとえば
- 強風の日だけ音がする
- 風向きが変わると音も変化する
- 薪ストーブを使用していなくても音がする
- 風が弱くなると音が止まる
といった特徴があれば煙突外部の部材や固定状態を確認する必要があります。
また、煙突は風の影響を受けるだけでなく建物や屋根など周囲の形状によって空気の流れも変化します。
したがって、煙突からの音を考える場合には煙突本体だけでなく、屋根上の煙突トップや周辺の建築条件も確認対象になります。
煙突内部に異物が入っている場合
「ゴトゴト」「カラカラ」「カサカサ」といった音では、煙突内部の異物も確認する必要があります。
煙突の上部から
- 葉
- 小枝
- 木片
- 鳥などが運び込んだ巣材
- その他の異物
が入り込む可能性があります。
異物が煙突内部に存在すると、風や煙突内部の気流によって動き、音を発生させることがあります。
また、異物が排気経路を狭くしている場合には単なる異音だけでなく、煙の排出にも影響する可能性があります。
環境省の資料でも煙突の詰まりは薪ストーブのトラブル原因の一つとして挙げられています。
煙突にすすやタールが詰まることで煙の逆流や火災につながる可能性があるとされています。
そのため、異物が疑われる場合には煙突内部を点検することが重要です。
すす・タールなどの堆積物が音に関係する場合
薪を燃やすと燃焼によって煙やすすなどが発生します。
燃焼状態や薪の状態、煙突の温度などによっては、煙突内部に燃焼生成物が付着することがあります。
環境省は薪ストーブのメンテナンスとしてシーズンの初めや終了時に煙突の点検と掃除を行うことを示しています。
煙突内部に堆積したものが剥がれたり落下したりすると煙突内部から「カサッ」「コトッ」「ゴトッ」という音が聞こえることがあります。
また、堆積物が多い状態は音だけの問題ではありません。
環境省は煙突にすすやタールが詰まることを煙の逆流やタール発生、火災につながるトラブルの原因として挙げています。
したがって異音が発生したときには煙突の清掃状態も確認する必要があります。
音が「いつ」「どのように」発生するかで整理する
煙突から音が聞こえたときは発生する条件を整理すると原因を絞り込みやすくなります。
焚き始めに発生する
煙突が冷えた状態から温まっているため、熱膨張による音の可能性があります。
燃焼中に発生する
煙突温度や燃焼状態が変化している可能性があります。
消火後に発生する
煙突が冷却され、金属が収縮する過程で音が発生する可能性があります。
強風時だけ発生する
煙突トップや外部部材、固定部分などの振動を確認します。
薪ストーブを使用していなくても発生する
熱膨張以外に、風や異物、部材の振動などを確認します。
突然、大きな音が発生した
煙突内部の状態や燃焼状態に異常がないか確認する必要があります。
このように、音そのものよりも、音が発生する条件を記録することが重要です。
煙突火災の場合は「異音」だけで判断しない
煙突から音がすると、煙突火災を心配する人もいます。
実際、煙道火災では異常な音が発生する場合があります。
環境省の資料では、煙道火災の兆候として音が発生し、火炎が強くなるにつれて音が大きくなることが示されています。
また、ゆっくりした煙道火災でも、煙突内部で金属音やひび割れ音などが発生する場合があるとされています。
そのため、
「音がしたから煙突火災」
とも、
「カタカタ音だから大丈夫」
とも、一律には判断できません。
特に注意が必要なのは、音と別の異常が同時に発生している場合です。
- 激しいパチパチ音
- バチバチという音
- 大きな破裂音
- ゴーッという音
- 煙突の異常な赤熱
- 煙突から炎が見える
- 大量の煙が発生する
- 室内に煙が入る
などが重なった場合には、通常の金属音とは区別して考える必要があります。
異音がしたときに確認したいポイント
煙突から異音が聞こえた場合は、次の項目を順番に確認すると整理しやすくなります。
① 音が発生した時間
焚き始め、燃焼中、薪追加時、消火後など、発生したタイミングを確認します。
② 風の状態
強風だったか、風向きが変わったかを確認します。
③ 音の種類
「カタカタ」「ゴトゴト」なのか、「パチパチ」「バチバチ」なのかを区別します。
④ 煙と臭い
いつもと違う煙や臭いが発生していないか確認します。
⑤ 煙突の外観
安全な地上から確認できる範囲で、煙突トップや見える部分に異常がないか確認します。
⑥ 煙突の清掃状態
すすやタールなどが蓄積していないか確認します。
⑦ 異物の可能性
葉、小枝、鳥の巣材などが入り込んでいないか確認します。
⑧ 固定状態
煙突や支持金具などに緩みや損傷がないか確認します。
屋根上など危険な場所を確認する必要がある場合は、専門業者による点検が適しています。
異音を「正常」「異常」と一つに決めつけない
煙突の異音について最も重要なのは、音の種類だけで原因を決めつけないことです。
「カタカタ」という音でも、熱膨張、部材の振動、風、異物など複数の原因が考えられます。
一方で、「パチパチ」という音についても、薪そのものが燃えている音なのか、煙突内部で発生している音なのかによって意味が変わります。
さらに、同じ煙突でも、住宅の構造や煙突の種類、設置方法、支持方法によって音の伝わり方は異なります。
そのため、
音の種類
↓
発生するタイミング
↓
風との関係
↓
煙・臭い・熱の有無
↓
煙突内部の状態
という順番で確認すると、原因を整理しやすくなります。
異音を放置しないための煙突管理
煙突の熱膨張によって発生する音まで完全になくすことはできません。
一方で、異物や堆積物、部材の状態などは定期的な点検によって確認できます。
環境省は、薪ストーブを安全に使用するため、取扱説明書を確認するとともに、煙突の点検・掃除を行うことを示しています。
特に煙突内部は、外側から見ただけでは状態が分からない部分があります。
そのため、
- 定期的な煙突掃除
- 煙突トップの確認
- 異物の確認
- 煙突部材の状態確認
- 支持金具などの点検
- 異常な煙や臭いの確認
- 異音が続く場合の専門業者による点検
が重要になります。
また、薪ストーブ本体についても、メーカーが指定する使用方法やメンテナンス方法に従うことが基本です。
まとめ
薪ストーブの煙突から「カタカタ」「ゴトゴト」という音が聞こえる原因は、一つではありません。
代表的な原因として、
- 煙突の熱膨張・収縮
- 煙突部材や固定部分の振動
- 強風による煙突トップなどの振動
- 煙突内部の葉や小枝などの異物
- 鳥の巣材など
- すすやタールなどの堆積物
などがあります。
特に、薪ストーブの焚き始めや消火後に音が発生する場合は、煙突の温度変化による金属の膨張・収縮が原因の一つとして考えられます。
一方、強風時だけ音がする場合は、煙突トップや外部部材、固定状態の確認が重要になります。
また、煙突内部から「ゴトゴト」という音が聞こえる場合には、異物や堆積物がないか確認する必要があります。
そして、激しい「パチパチ」「バチバチ」という音、大きな破裂音、煙突の異常な赤熱、炎、大量の煙などが同時に発生した場合は、通常の金属音とは区別する必要があります。
煙道火災では異音が発生することがあり、環境省も金属音やひび割れ音などを煙道火災の兆候として挙げています。
煙突から音がしたときに重要なのは、音だけで「正常」「異常」と判断しないことです。
「いつ音がするのか」「風と関係しているのか」「煙や臭いはないか」「煙突に異常な熱がないか」「煙突内部に異物や堆積物がないか」を確認することで、原因を整理できます。
煙突は薪ストーブの排気を担う重要な設備です。
普段と明らかに違う音が続く場合や、異音と同時に煙・熱・炎などの異常が見られる場合には、使用を続けるのではなく、安全を確保したうえで専門業者による点検を受けることが重要です。
参考資料・サイト
今回の記事では、特に煙突の異音・熱膨張・煙突火災・すすやタール・点検清掃に関係する資料を参考にできます。
- 環境省「木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン」
薪ストーブの設置、運転、煙突・排気筒の清掃、定期点検などについてまとめられた資料です。煙突のメンテナンスについて確認する際の基本資料として使えます。
環境省「木質バイオマスストーブ普及のための環境ガイドライン」 - 環境省「木質バイオマスストーブの主なトラブルと原因」
煙突の詰まり、すす・タール、煙の逆流、煙道火災など、薪ストーブ使用時に起こり得るトラブルを確認するための資料です。 - Chimney Safety Institute of America(CSIA)「Preventing Chimney Fires」
煙突火災の兆候として、大きな「cracking」「popping」音、濃い煙、強い熱臭などを説明しています。また、クレオソートの生成や煙突火災との関係についても解説しています。
CSIA「Preventing Chimney Fires」 - Chimney Safety Institute of America(CSIA)「Chimney Fires」
煙突火災時に聞こえる音について、金属部材の膨張やクレオソートの落下、燃焼による音などを詳しく説明しています。今回の記事の「カタカタ・ゴトゴト」という音を考えるうえで特に参考になる資料です。
CSIA「Chimney Fires」 - Chimney Safety Institute of America(CSIA)「The Homeowner’s Guide」
煙突火災で発生する「ゴーッ」という音や、ポッピング・クラック音、煙突トップからの炎やクレオソート片などについて説明しています。
CSIA「The Homeowner’s Guide」 - Chimney Safety Institute of America(CSIA)「After Chimney Fire」
煙突火災後の点検について、煙突の接合部、金属疲労、変形、亀裂など、外観だけでは確認できない損傷があることを説明しています。
CSIA「After Chimney Fire」 - 山梨市「木質バイオマスストーブの適切な使用について」
薪ストーブ・ペレットストーブの適切な使用、定期的な清掃、シーズンオフの点検、煙突メンテナンスについて説明しています。
山梨市「木質バイオマスストーブの適切な使用について」 - 札幌市「木質バイオマスストーブを設置予定の方及びご使用されている方へ」
ストーブ本体と煙突の定期的な点検・清掃を推奨しており、すすの飛散防止や煙道火災の予防についても説明しています。
札幌市「木質バイオマスストーブを設置予定の方及びご使用されている方へ」



