はじめに
薪ストーブで使う薪には樹種によって大きな違いがあります。
同じ大きさの薪でも重量、密度、乾燥状態によって得られる熱量が異なります。
また、燃焼時間、熾(おき)の残り方、割りやすさ、着火性などにも違いがあります。
日本ではナラ、クヌギ、カシ、ミズナラなどの広葉樹が薪や薪炭の原料として利用されてきました。
林野庁も里山林で薪炭などに利用される代表的な広葉樹としてコナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類を挙げています。(林野庁)
一方、北米ではオーク、ヒッコリー、メープル、アッシュなどが代表的な薪として利用されています。
アメリカの大学や森林当局の資料ではこれらの樹種は密度が高く乾燥させることで高い熱量を得られる薪として評価されています。(USDA Forest Service)
では、世界中の木を薪として比較した場合どの木が優れているのでしょうか。
実は「世界一の薪」を決める公式な世界ランキングは存在しません。
薪の評価は「1本あたりの熱量」なのか「1立方メートルあたりの熱量」なのか「乾燥しやすさ」なのか「割りやすさ」なのかによって変わるからです。
特に薪ストーブでは木材の水分量が非常に重要です。
乾燥していない薪は水分を蒸発させるために燃焼熱の一部が使われるため十分に乾燥した薪より効率よく熱を取り出せません。
ユタ州立大学の資料でも薪の熱量は樹種、密度、水分量によって大きく変わると説明されています。(Utah State University Extension)
そこでこの記事では各国の森林・大学・林業関係機関の資料で公表されている熱量や薪としての評価をもとに薪として高い評価を受けている樹種をランキング形式で紹介します。
この記事でわかること
- 薪の「良さ」を決める基準
- 世界で高く評価される薪の樹種
- ヒッコリー、オーク、アッシュなどの特徴
- 日本のナラ、クヌギ、カシ類の位置づけ
- 世界で特に熱量が高い樹種
- 広葉樹が薪として好まれる理由
- 密度と熱量の関係
- 薪ストーブでは樹種以上に乾燥が重要な理由
結論
薪として高く評価される木には共通する特徴があります。
それは
密度が高いこと
十分に乾燥できること
長く燃えること
良質な熾が残ること
です。
アメリカの公的資料ではオーク、ヒッコリー、アッシュ、ハードメープル、ビーチ、バーチなどが高い評価を受けています。
USDA Forest Serviceの資料ではシログワ(White oak)は乾燥薪1コードあたり約27.0百万Btu、レッドオークは約25.3百万Btu、シバグ・ヒッコリーは約29.1百万Btuとされています。(USDA Forest Service)
一方、オセージオレンジのようにさらに高い熱量を示す樹種もあります。
オクラホマ州立大学の資料では乾燥薪1コードあたりの回収可能熱量がオセージオレンジで30.0~32.9百万Btuとされています。(Oklahoma State University Extension)
日本ではナラ、クヌギ、カシ類などが代表的な薪炭樹です。
林野庁はコナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類などを薪炭やきのこ原木として利用される広葉樹として挙げています。(林野庁)
ただし樹種だけで薪の優劣を決めることはできません。
同じ樹種でも水分量や密度、燃焼条件によって実際に得られる熱量は変わります。
そのためこの記事のランキングは「絶対的な世界一」ではなく公表されている熱量と一般的な薪としての評価をもとにした比較です。
1位 オセージオレンジ
- 非常に高い熱量を持つ樹種
薪の熱量という観点で非常に高い数値を示す樹種の一つがオセージオレンジです。
学名は Maclura pomifera。
北米原産の樹木で非常に密度の高い木材として知られています。
オクラホマ州立大学の資料では乾燥薪1コードあたりの回収可能熱量が30.0~32.9百万Btuとされています。(Oklahoma State University Extension)
ペンシルベニア州立大学の資料でもオセージオレンジは乾燥薪1コードあたり30.7百万Btuとされ同資料の表では一般的な広葉樹の中で最も高い数値です。(Penn State Extension)
非常に高密度であるため同じ体積の薪と比較すると大きな熱量を持ちます。
ただし熱量が高いことだけが長所ではありません。
密度が高いため着火しにくく薪割りも難しいとされています。
また、燃焼時に火花が出ることもあります。
ミズーリ大学の資料ではオセージオレンジは「Very high」の熱量評価を受ける一方、割りにくく火花を出す特徴が示されています。(University of Missouri Extension)
つまり
熱量は非常に高いが扱いやすさでは別の評価になる薪
です。
2位 ヒッコリー
- 北米を代表する高火力薪
ヒッコリーは北米で非常に評価の高い薪です。
ヒッコリー属には複数の樹種がありますがシバグ・ヒッコリーなどは薪として高い熱量を持ちます。
USDA Forest Serviceの資料ではシバグ・ヒッコリーの乾燥薪1コードあたりの潜在的利用可能熱量は約29.1百万Btuです。(USDA Forest Service)
オクラホマ州立大学の資料でもシバグ・ヒッコリーは25.3~27.7百万Btu、ビターナット・ヒッコリーは23.7~26.5百万Btuとされています。(Oklahoma State University Extension)
ヒッコリーの特徴は単に熱量が高いことだけではありません。
薪として燃やした場合、良質な熾が残ることでも評価されています。
ミズーリ大学はヒッコリーについて「Excellent」と評価し、熱量が高く、良質な熾を作る樹種として紹介しています。(University of Missouri Extension)
そのため長時間暖房を目的とする薪ストーブとの相性が良い樹種として扱われています。
3位 オーク
- 世界的に知られる代表的な薪
オークは北米やヨーロッパで非常に重要な薪です。
日本でいうナラ類と同じブナ科コナラ属の樹木が多く含まれます。
ただし「オーク」という名前には多数の樹種が含まれるためすべてのオークが同じ性能ではありません。
USDA Forest Serviceの資料ではホワイトオークが約27.0百万Btu、レッドオークが約25.3百万Btuとされています。(USDA Forest Service)
オクラホマ州立大学でもホワイトオークは24.0~29.1百万Btu、レッドオークは22.1~25.9百万Btuとされています。(Oklahoma State University Extension)
オークは高密度で長く燃えやすい薪として知られています。
一方、乾燥には時間がかかります。
ニューハンプシャー大学の資料でもオークとヒッコリーは乾燥が難しく長時間燃焼と良質な熾を作る薪として説明されています。(University of New Hampshire Extension)
4位 ブラックローカスト
- 高密度で長時間燃える木
ブラックローカストは北米原産のマメ科の樹木です。
学名は Robinia pseudoacacia。
非常に密度の高い木材を持ち薪としても高く評価されています。
USDA Forest Serviceの資料ではブラックローカストは乾燥薪1コードあたり約28.1百万Btuとされています。(USDA Forest Service)
オクラホマ州立大学の資料では23.2~28.3百万Btu、ミズーリ大学では「Excellent」と評価されています。(Oklahoma State University Extension) (University of Missouri Extension)
熱量だけを見るとオークやヒッコリーと並ぶ非常に優秀な薪です。
一方で密度が高いため薪割りは簡単ではありません。
薪としては
高熱量・長時間燃焼・良好な熾
という特徴を持つ樹種です。
5位 ビーチ
- ヨーロッパを代表する薪
ビーチ、つまりブナ属の木も薪として高く評価されています。
ヨーロッパではヨーロッパブナ(Fagus sylvatica)が広く分布し森林を構成する主要樹種の一つです。
北米の薪資料でもビーチは高熱量の薪として評価されています。
USDA Forest Serviceの資料ではビーチの乾燥木材の重量あたり熱量は8,151~8,760Btu/lbとされています。(USDA Forest Service)
ミズーリ大学でもビーチは「Excellent」と評価され熱量が高く、燃焼しやすく、薪として優れた樹種とされています。(University of Missouri Extension)
ビーチは日本のブナと同じブナ属に属します。
ただし日本のブナとヨーロッパブナは別種です。
6位 ハードメープル
- カエデの中でも高密度な木
ハードメープルの代表はシュガーメープルです。
学名は Acer saccharum。
北米東部を代表する広葉樹の一つです。
USDA Forest Serviceの資料ではシュガーメープルは乾燥薪1コードあたり約25.0百万Btuとされています。(USDA Forest Service)
オクラホマ州立大学では23.2~24.0百万Btuとされています。(Oklahoma State University Extension)
ニューハンプシャー大学ではメープル、バーチ、アッシュ、ビーチは比較的乾燥・薪割りがしやすく一般的な薪として利用しやすい樹種とされています。(University of New Hampshire Extension)
つまりハードメープルは
熱量と扱いやすさのバランスが良い薪
として評価できます。
7位 アッシュ
- 扱いやすさで評価される薪
アッシュ、つまりトネリコ属の樹木も薪として高く評価されています。
ホワイトアッシュは北米の代表的な薪です。
USDA Forest Serviceの資料ではホワイトアッシュの乾燥薪1コードあたりの熱量は約23.6百万Btuです。(USDA Forest Service)
オクラホマ州立大学では21.6~24.6百万Btuとされています。(Oklahoma State University Extension)
アッシュはオークやヒッコリーほど極端に高密度ではありません。
そのため薪割りや燃焼開始などの扱いやすさとのバランスが良いとされています。
ニューハンプシャー大学もアッシュをメープル、バーチ、ビーチなどとともに比較的乾燥・薪割りしやすい薪として挙げています。(University of New Hampshire Extension)
8位 バーチ
- 北欧でも重要な薪
バーチ、つまりカバノキ類は北欧の薪文化を考えるうえで非常に重要な樹種です。
特にヨーロッパ北部ではバーチは森林資源として利用されてきました。
薪としても比較的高い評価を受けています。
USDA Forest Serviceの資料ではペーパーバーチの乾燥木材の熱量は8,019~8,650Btu/lbとされています。(USDA Forest Service)
ミズーリ大学ではバーチを高熱量・燃焼しやすい薪として「Excellent」と評価しています。(University of Missouri Extension)
バーチはオークやヒッコリーほど長時間燃焼する代表的薪ではありませんが燃焼性や扱いやすさを含めて評価されます。
9位 アッシュ・オーク系以外の果樹
- リンゴなども優秀な薪になる
薪として利用できる木は森林樹木だけではありません。
果樹も薪になります。
特にリンゴなどの果樹は比較的高い熱量を持っています。
ユタ州立大学の資料ではリンゴの乾燥薪1コードあたりの熱量は約27.0百万Btuとされています。さらに香りについても高い評価が記載されています。(Utah State University Extension)
アメリカでは果樹園の更新や剪定などで生じた木材が薪として利用されることがあります。
果樹薪は単純な熱量だけでなく燃焼時の香りなども特徴の一つです。
ただし果樹の薪がどこでも大量に入手できるわけではありません。
そのため薪ストーブの主燃料というより地域によって入手できる特色ある薪として考える方が適切です。
10位 日本のナラ・クヌギ・カシ類
- 日本を代表する薪炭樹
日本の薪を考えるなら、ナラ、クヌギ、カシ類を外すことはできません。
林野庁は里山林で薪炭やきのこ原木として利用される広葉樹としてコナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類などを挙げています。(林野庁)
特にクヌギ、ナラ、カシ類は薪だけではなく木炭の原料としても重要でした。
林野庁によると茶炭原木としてのクヌギは7~8年程度、黒炭原木としてのナラ類は20~30年程度、白炭原木としてのカシ類は20~30年程度が伐採適齢期の目安とされています。(林野庁)
このことからも日本では樹木を単純に伐って燃やすだけではなく樹種ごとの性質を利用して薪や炭など異なる燃料を生産してきたことが分かります。
「熱量ランキング」と「使いやすさランキング」は違う
ここまでランキングを紹介しましたが重要な注意点があります。
薪は「熱量が高いほど最高」とは限りません。
たとえばオセージオレンジは非常に高い熱量を持ちます。
しかし非常に密度が高いため割るのが難しく着火もしやすい木ではありません。(University of Missouri Extension)
反対にアッシュなどは熱量が極端に高いわけではありませんが扱いやすさとのバランスに優れています。(University of New Hampshire Extension)
つまり薪を評価するときには
熱量
だけではなく
乾燥性
薪割りのしやすさ
着火性
燃焼時間
熾の質
煙や火花
などを考える必要があります。
薪の熱量は「重量」と「体積」で意味が違う
薪の熱量を比較するとき非常に重要なのが「重量」と「体積」の違いです。
木材そのものは乾燥状態で重量あたりの熱量に大きな差がありません。
しかし木材の密度には大きな違いがあります。
例えば同じ1立方メートルでも密度の高いオークは重く密度の低いポプラなどは軽くなります。
そのため同じ体積の薪なら、高密度の木の方が多くの熱量を含みます。
イリノイ大学エクステンションも薪の量を考える際には密度、つまり単位体積あたりの重量が重要でありオークやヒッコリー、アッシュなどが一般的に好まれる理由として説明しています。(Illinois Extension)
したがって薪の「火力ランキング」を作る場合には重量あたりなのか、体積あたりなのかを明確にする必要があります。
乾燥していない薪は、どんな樹種でも性能が落ちる
薪ストーブで最も重要なのは樹種だけではありません。
水分です。
切ったばかりの木には大量の水分が含まれています。
その薪を燃やすと燃焼によって発生した熱の一部が水分の蒸発に使われます。
その結果、乾燥した薪と比較して取り出せる熱が少なくなります。
また、水分の多い薪は煙やすす、クレオソートの発生にも関係します。
ユタ州立大学は含水率20%程度の乾燥薪を前提に熱量を示しており生木は水分を沸騰させるために熱を使うため乾燥薪より熱効率が低く煙やクレオソートも増えると説明しています。(Utah State University Extension)
したがって
オークの乾燥薪
と
オークの生木
は、同じ「オーク薪」でも燃焼性能が同じではありません。
乾燥期間は樹種によっても変わる
木材の乾燥には樹種、太さ、割り方、気候、保管方法などが関係します。
ミズーリ大学は多くの高密度広葉樹では完全に乾燥させるまで少なくとも1年程度を要するとしています。
薪は地面から離して積み、風通しを確保し、雨や雪による再吸湿を防ぐことが推奨されています。(University of Missouri Extension)
ニューハンプシャー大学もオークやヒッコリーは乾燥が難しい樹種として紹介しています。(University of New Hampshire Extension)
したがって高火力の薪ほど「乾燥させれば優秀」という場合もあれば「乾燥に時間がかかる」という弱点を持つ場合もあります。
日本の薪と世界の薪を比較すると
世界の薪を比較すると日本で使われている薪も決して特殊なものではありません。
ナラ類は北米のオーク類と同じブナ科コナラ属です。
日本のミズナラは北米のオークと同じ「Quercus属」に含まれます。
また、日本のブナ類とヨーロッパブナは同じブナ科ブナ属という共通点があります。
カシ類も高密度な広葉樹として薪や炭に利用されてきました。
日本の里山ではコナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類などが薪炭資源として利用されてきました。(林野庁)
つまり日本にも世界的に見て優秀な薪となる広葉樹が数多く存在します。
なぜ広葉樹が薪として人気なのか
薪ストーブ用の薪として広葉樹が好まれる理由は主に密度にあります。
高密度の広葉樹は同じ体積の中に多くの木質成分を含みます。
そのため乾燥させた場合、単位体積あたりの熱量が高くなります。
USDA Forest Serviceも密度の高い木材ほどコードあたりの熱量が高くなると説明しています。(USDA Forest Service)
さらに高密度の薪は長く燃焼し、熾が残りやすい傾向があります。
そのため薪ストーブで長時間暖房する場合にはオーク、ヒッコリー、ビーチ、アッシュなどが利用されています。
針葉樹は薪として劣るのか
「広葉樹が良い薪で針葉樹は悪い薪」という考え方は正確ではありません。
針葉樹にも薪として利用できる樹種があります。
例えばユタ州立大学の資料ではショートリーフパインは約19.0百万Btu、ポンデローサパインは約18.3百万Btuとされています。(Utah State University Extension)
針葉樹は一般に密度が低い樹種が多いため同じ体積なら高密度広葉樹より熱量が低くなる傾向があります。
一方で着火しやすいという利点があります。
ニューハンプシャー大学も、パイン、ヘムロック、スプルース、アスペンなどを着火用の小割り材として混ぜる方法を紹介しています。(University of New Hampshire Extension)
つまり
針葉樹=悪い薪
ではありません。
用途が違うのです。
薪の世界ランキングを作るときの注意点
今回のランキングは世界のすべての樹種を統一条件で比較したものではありません。
その理由は各国・各機関によって測定方法や条件が異なるためです。
例えば
- 含水率
- 樹木の個体差
- 樹種
- 薪の体積
- 樹皮の有無
- 測定方法
- 燃焼効率
などによって数値が変わります。
ペンシルベニア州立大学も薪の熱量は資料によって異なることがあり測定方法や個体差が影響すると説明しています。(Penn State Extension)
そのため「オセージオレンジが世界一」「ヒッコリーが世界二位」と断定するより
「公表されている薪の熱量資料ではオセージオレンジ、ヒッコリー、オーク、ブラックローカストなどが非常に高い値を示している」
と理解する方が科学的に正確です。
薪ストーブに向いている木の条件
薪ストーブ用の薪として重要なのは、次の条件です。
- 1.十分に乾燥している
樹種よりも優先して考える必要があります。
- 2.適度な密度がある
密度が高いほど同じ体積で多くの熱量を得やすくなります。
- 3.良質な熾が残る
長時間の暖房に向いています。
- 4.適度に割りやすい
薪作りの負担が小さくなります。
- 5.地域で安定して入手できる
輸送コストを考えると地域の森林資源を利用できることには意味があります。
- 6.薪ストーブに適した状態で保管できる
乾燥後も雨や地面からの湿気を避ける必要があります。
世界の薪を大きく分類すると
今回紹介した樹種を大まかに分類すると次のようになります。
| 樹種 | 主な地域 | 薪としての特徴 |
|---|---|---|
| オセージオレンジ | 北米 | 非常に高熱量・高密度 |
| ヒッコリー | 北米 | 高熱量・長時間燃焼・良質な熾 |
| オーク | 北米・欧州など | 高密度・長時間燃焼 |
| ブラックローカスト | 北米 | 高密度・高熱量 |
| ビーチ | 欧州など | 高熱量・良質な熾 |
| ハードメープル | 北米 | 高熱量・比較的扱いやすい |
| アッシュ | 北米・欧州など | 扱いやすさと熱量のバランス |
| バーチ | 北欧など | 燃焼しやすく高評価 |
| リンゴ | 各地域 | 高熱量・香りも特徴 |
| ナラ・クヌギ・カシ類 | 日本 | 伝統的な薪炭樹・高密度広葉樹 |
この表から分かるように「薪に向く木」は世界中に存在します。
そして多くの場合、高密度な広葉樹が高い評価を受けています。
まとめ
世界の薪を比較すると非常に多くの樹種が薪として利用されていることが分かります。
特に高い熱量を示す代表的な樹種には
オセージオレンジ
ヒッコリー
オーク
ブラックローカスト
ビーチ
などがあります。
オセージオレンジはアメリカの大学資料で乾燥薪1コードあたり30~33百万Btu前後という非常に高い熱量が示されています。(Oklahoma State University Extension)
ヒッコリーも25~28百万Btu程度の資料があり高熱量で良質な熾を作る薪として評価されています。(University of Arkansas Extension)
オークもホワイトオークやレッドオークなどの種類によって差がありますが概ね高熱量の薪として評価されています。(USDA Forest Service)
日本ではナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類などが代表的な薪炭樹です。
林野庁もこれらの広葉樹が薪炭やきのこ原木として利用されてきたことを示しています。(林野庁)
しかし、ここで一番重要なのは樹種だけで薪の性能が決まるわけではないということです。
薪の熱量を大きく左右するのが木材の密度と水分量です。
高密度の木は同じ体積なら多くの熱量を持ちます。
しかし、どれほど高密度な木でも十分に乾燥していなければ燃焼時に水分の蒸発へ熱が使われます。(Utah State University Extension)
そのため薪ストーブにおいては
「何の木か」
と同じくらい
「どれだけ乾いているか」
が重要です。
また、熱量が高い木には必ずしも扱いやすいという特徴があるわけではありません。
オセージオレンジやブラックローカストのような高密度樹種は熱量が高い一方で薪割りが難しい場合があります。(University of Missouri Extension)
一方、アッシュなどは熱量と扱いやすさのバランスが良い薪として評価されています。(University of New Hampshire Extension)
したがって「世界の薪になる木ランキング」を正確に表現するなら
熱量ランキング
燃焼時間ランキング
割りやすさランキング
乾燥しやすさランキング
総合的な使いやすさランキング
は、それぞれ別に考える必要があります。
そして日本のナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類も世界の薪文化の中で決して特殊な存在ではありません。
北米のオークやヒッコリー、ヨーロッパのビーチやオーク、北欧のバーチなどと同じように日本にも長い薪炭利用の歴史を持つ広葉樹があります。
薪の世界を見ていくと地域によって使われる樹種は大きく異なります。
しかしその中には共通する法則があります。
密度が高い木は同じ体積なら多くの熱量を持ちやすい。
乾燥した薪ほど燃焼に適している。
高密度の薪は長く燃え良質な熾を残しやすい。
そして
地域で利用できる樹種をその土地の森林環境に合わせて使ってきた。
これが世界の薪文化に共通する大きな特徴です。
一本の薪を見ただけではその価値は分かりません。
その木がどの森林で育ちどのように伐採されどのように割られ、どのくらい乾燥され、どのような火で燃やされるのか。
そこまで考えると薪は単なる燃料ではなく森林と人間の暮らしをつなぐ木質エネルギーであることが分かります。
参考資料
- USDA Forest Service「Wood Fuel for Heating」
薪の樹種別熱量、密度、重量、薪としての評価など。
USDA Forest Service「Wood Fuel for Heating」 - USDA Forest Service「Typical Heating Values for Hardwoods」
広葉樹の重量あたり熱量に関する資料。
USDA Forest Service「Typical Heating Values for Hardwoods」 - Oklahoma State University Extension「Firewood: Recommendations for Using Firewood as an Indoor Heating Source」
オセージオレンジ、ヒッコリー、オーク、アッシュなどの熱量比較。
Oklahoma State University Extension「Firewood」 - University of Missouri Extension「Wood Fuel for Heating」
薪の密度、乾燥、熱量、燃焼特性について。
University of Missouri Extension「Wood Fuel for Heating」 - University of New Hampshire Extension「Heating Your Home with Wood」
オーク、ヒッコリー、メープル、アッシュ、ビーチなどの薪としての特徴。
University of New Hampshire Extension「Heating Your Home with Wood」 - Utah State University Extension「Wood Heating」
樹種別の重量、熱量、乾燥状態、燃焼特性など。
Utah State University Extension「Wood Heating」 - Illinois Extension「Firewood」
木材密度と薪の熱量、オーク・ヒッコリー・アッシュなどについて。
Illinois Extension「Firewood」 - 林野庁「里山林の薪炭や、きのこ生産資材としての利用」
コナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ類など、日本の薪炭・里山林の利用について。
林野庁「里山林の薪炭や、きのこ生産資材としての利用」 - University of Arkansas Extension「Arkansas Firewood」
ヒッコリー、ブラックローカスト、オーク、アッシュなどの薪としての比較。
University of Arkansas Extension「Arkansas Firewood」 - Penn State Extension「Heating with Wood: An Introduction」
オセージオレンジ、ヒッコリー、オーク、メープル、アッシュなどの熱量比較。
Penn State Extension「Heating with Wood」


