はじめに
薪ストーブは薪を燃やして熱を得るというシンプルな暖房器具です。
一方で薪を燃やすことで微粒子状物質、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素酸化物、有機ガス状化合物などが発生します。
また、住宅内で火を扱うため火災や煙突の安全性も考えなければなりません。
そのため薪ストーブにはさまざまな規制があります。
特にヨーロッパではEUが薪ストーブなどの固体燃料暖房機器についてエネルギー効率や排出物に関する「Ecodesign(エコデザイン)」の基準を設けています。
EUの規則では固体燃料を使用する局所暖房機器について2022年1月1日から一定の効率・排出基準を満たすことが求められています。
一方、日本では薪ストーブに関する規制の中心は消防法・火災予防条例、建築基準法、煙突の構造などの安全面にあります。
消防庁によれば薪ストーブなどの固体燃料を使用する火気設備について2023年には防火上の基準が見直されました。
つまり欧州と日本ではどちらも薪ストーブを規制していますが規制の仕組みや重点には違いがあります。
この記事ではEUの制度を中心にドイツやイギリスなどの具体例も取り上げながら日本との違いを事実に基づいて整理します。
この記事でわかること
- EUでは薪ストーブがどのように規制されているのか
- Ecodesign規則とは何なのか
- 2022年から何が変わったのか
- EUの薪ストーブに求められる排出基準
- ドイツの厳しい薪ストーブ規制
- イギリスのSmoke Control Area制度
- 日本の薪ストーブ規制の特徴
- 日本では煙突がどのように規制されているのか
- 欧州と日本では何が大きく違うのか
結論
欧州と日本の薪ストーブ規制には大きく分けて次のような違いがあります。
| 項目 | 欧州 | 日本 |
|---|---|---|
| ストーブ本体 | EU Ecodesignなどで効率・排出を規制 | 消防・建築などの安全規制が中心 |
| PM・粒子状物質 | EUレベルで排出基準あり | PM2.5の環境基準はあるが、家庭用薪ストーブについてEU同様の全国一律排出基準とは異なる |
| CO | EUで機器の排出基準あり | 一般住宅用薪ストーブについてEUと同じ仕組みではない |
| 煙突 | 各国・地域の建築・排煙規則など | 建築基準法施行令などで構造・離隔距離を規定 |
| 火災安全 | 各国の制度 | 消防法・火災予防条例・建築基準法 |
| 地域規制 | 国・自治体によって異なる | 市町村の火災予防条例などによって異なる |
| 既存ストーブ | 国によって更新・使用制限あり | 欧州とは異なる制度 |
| 燃料 | 国によって乾燥・品質基準などあり | 一般住宅向け薪の全国統一排出規格とは異なる |
EUのEcodesign規則では固体燃料局所暖房機器について2022年1月1日から効率とPM、CO、OGC、NOxなどの排出基準が設定されています。
日本では薪ストーブの設置について消防法令に基づく火災予防条例や建築基準法による規制が重要です。
消防庁も「薪ストーブや炭焼き器等の固体燃料を用いる火気設備」について2023年に基準を整備したと説明しています。
したがって単純に「欧州は規制が厳しく、日本は規制が緩い」と表現することはできません。
欧州はストーブそのものの環境性能に関する規制が明確で日本は設置・防火・煙突などの安全面に関する法規が重要
という違いがあります。
- そもそも「欧州の薪ストーブ規制」は一つではない
- Ecodesignとは何か
- EUでは2022年からEcodesign要求が適用
- EUのPM規制
- COやNOxも規制対象
- Ecodesignは「既存ストーブをすべて交換」という制度ではない
- ドイツは独自の排出規制を持っている
- ドイツではストーブの排出性能が数値化されている
- ドイツでは古い薪ストーブにも規制が及ぶ
- イギリスではSmoke Control Areaが重要
- イギリスでは薪ストーブ本体だけでなく地域も重要
- イギリスでは薪そのものにも規制がある
- 日本の規制は何が中心なのか
- 日本では火災予防条例が地域ごとに関係する
- 日本では2023年に薪ストーブの火気設備基準が見直された
- 日本の煙突にも法律上の基準がある
- 日本の規制で「離隔距離」が重要な理由
- 日本のPM2.5環境基準と薪ストーブ規制は別の話
- 日本の大気汚染防止法は一定規模以上の施設が中心
- 欧州と日本の大きな違い①「ストーブ本体の環境性能」
- 欧州と日本の大きな違い②「既存ストーブ」
- 欧州と日本の大きな違い③「地域による規制」
- 日本も「一つの規制」ではない
- 欧州の規制から見える薪ストーブの変化
- 日本の薪ストーブは「設置」が特に重要
- 「欧州の薪ストーブは規制が厳しい」は半分正しい
- 「日本は規制がない」も正しくない
- 欧州と日本の違いを一言で表すと
- まとめ
- 参考資料
そもそも「欧州の薪ストーブ規制」は一つではない
最初に重要なのは「欧州の規制」という言葉だけで一つの法律を想像しないことです。
ヨーロッパにはEU加盟国がありEU共通の規則がある一方、それぞれの国が独自の環境・建築・消防関連の法律を持っています。
EUでは薪ストーブなどの固体燃料局所暖房機器について「Commission Regulation (EU) 2015/1185」があります。
この規則は固体燃料を使用する局所暖房機器の市場投入・使用開始に関するEcodesign要求事項を定めたものです。
対象は定格熱出力50kW以下の固体燃料局所暖房機器です。
EUの公式説明では対象となる製品には薪、石炭、ペレットなどの固体燃料を使用する局所暖房機器が含まれています。
つまり
EU共通の製品規制
と
各国独自の使用・設置規制
の両方があります。
Ecodesignとは何か
Ecodesignは製品の環境性能を考慮して設計・製造するためのEUの制度です。
薪ストーブについては燃料を燃やしたときの効率だけでなく排出される物質も規制対象になります。
EU規則では環境面で重要な要素として
- エネルギー消費
- 粒子状物質(PM)
- 有機ガス状化合物(OGC)
- 一酸化炭素(CO)
- 窒素酸化物(NOx)
などが挙げられています。
薪ストーブは「木を燃やせば暖かくなる」というだけではありません。
燃焼効率が低い場合、燃料から得られる熱が十分に利用されない一方、煙や排出物が増える可能性があります。
そこでEUではストーブを製品として販売する段階から一定の性能を求めています。
EUでは2022年からEcodesign要求が適用
EUの規則では固体燃料局所暖房機器についてEcodesign要求を2022年1月1日から適用しています。
これは現在の欧州薪ストーブを理解するうえで重要な日付です。
例えば密閉式の薪ストーブでペレット以外の固体燃料を使用するものについては季節暖房効率65%以上という基準が定められています。
圧縮木質ペレットを使用する密閉式機器では79%以上です。
またPMについても基準があります。
密閉式でペレット以外の固体燃料を使用する機器などでは測定方法に応じてPM排出量の上限が設定されています。
さらにCO、OGC、NOxについても上限が定められています。
つまりEUでは
「薪ストーブとして暖かければよい」
だけではなく
「どれだけ効率よく燃焼し、どれだけ排出するのか」
が製品規制の対象になっています。
EUのPM規制
薪ストーブから排出される微粒子はヨーロッパの環境政策でも重要な問題です。
EUのEcodesign規則では2022年1月1日からPM排出量に上限が設けられました。
例えば薪などの固体燃料を使用する密閉式局所暖房機器では測定方法に応じて40mg/m³、5g/kgなどの基準が定められています。
ペレットを使用する密閉式機器ではさらに低い基準が設定されています。
これは非常に重要な違いです。
EUでは薪ストーブの環境性能を評価する際に
「暖房効率」だけでなく「排出物」
を数値として扱っています。
COやNOxも規制対象
EUのEcodesign規則ではPMだけではありません。
一酸化炭素(CO)、有機ガス状化合物(OGC)、窒素酸化物(NOx)も規制対象です。
例えば密閉式でペレット以外の固体燃料を使用する局所暖房機器についてCOは1,500mg/m³以下、OGCは120mgC/m³以下、NOxは200mg/m³以下という基準があります。
これは薪ストーブを単なる「暖房器具」としてではなく
燃焼によって大気へ物質を排出する機器
として扱っていることを示しています。
Ecodesignは「既存ストーブをすべて交換」という制度ではない
ここは誤解されやすい部分です。
EUのEcodesign規則は固体燃料局所暖房機器の市場投入・使用開始について要求事項を設定しています。
したがって
「2022年になったので、ヨーロッパの古い薪ストーブはすべて使用禁止になった」
という意味ではありません。
既存ストーブの使用については各国の法律や地域の規則によって扱いが異なります。
この点が「EU規制」と「各国の既存設備規制」を分けて考える必要がある理由です。
ドイツは独自の排出規制を持っている
ドイツではEUのEcodesignとは別に固体燃料を使用する小規模・中規模燃焼設備について「1. BImSchV」という連邦規則があります。
正式には
Erste Verordnung zur Durchführung des Bundes-Immissionsschutzgesetzes
で、日本語では「連邦イミッション防止法第1次施行令」などと訳されます。
この規則では固体燃料を使用する燃焼設備について排出物や設備の運転などを規定しています。
特に重要なのが薪ストーブなどの個別室暖房設備についても排出基準が設定されていることです。
ドイツではストーブの排出性能が数値化されている
ドイツの1. BImSchVでは固体燃料を使用する個別室暖房設備について型式試験の排出基準と最低効率が定められています。
例えば2014年12月31日以降に設置される対象設備の一部ではCO1.25g/m³、粉じん0.04g/m³、最低効率73%などの基準があります。
設備の種類によって数値は異なります。
またドイツでは2010年より前に設置された既存の個別室暖房設備についても一定の移行措置があります。
- BImSchV第26条では古い設備について粉じん0.15g/m³、CO4g/m³という基準を示し基準を満たさない設備については設置年に応じて粉じん削減装置の設置または使用停止の期限を定めています。
例えば1995年から2010年3月21日までに設置された対象設備については2024年12月31日が移行期限として設定されていました。
これは日本の薪ストーブ規制と比較すると非常に特徴的な制度です。
ドイツでは古い薪ストーブにも規制が及ぶ
ドイツの制度では単に「新しいストーブを環境性能の高いものにする」というだけではありません。
既存設備についても一定の排出基準を満たすことが求められる仕組みがあります。
ただしすべての古い暖房設備が一律に対象となるわけではありません。
ドイツの規則には
- 調理用・パン焼き用の一部設備
- 開放暖炉
- 基礎暖炉
- 特定の住宅における設備
- 1950年以前に製造・設置されたことを証明できる設備
などについて例外規定があります。
したがって「ドイツでは古い薪ストーブはすべて禁止」とするのも正確ではありません。
イギリスではSmoke Control Areaが重要
イギリスでは薪ストーブの規制を理解するうえで「Smoke Control Area」が重要です。
英国政府によるとSmoke Control Areaでは煙突から煙を排出することが禁止されています。
また、木材などの許可されていない燃料を燃やす場合にはDefraの承認を受けた「exempt appliance」を使用する必要があります。
つまり同じイギリス国内でも
どの地域に住んでいるか
によって薪ストーブの使用条件が変わる場合があります。
イギリスでは薪ストーブ本体だけでなく地域も重要
Smoke Control Areaでは薪ストーブの種類と燃料の組み合わせが重要です。
英国政府は薪などのunauthorised fuelを使用する場合、Defra approved appliance、つまりexempt applianceを使用する必要があると説明しています。
さらに英国政府の薪ストーブ向け資料では新たに市場へ出される薪ストーブについてEcodesign基準への適合が説明されています。
つまりイギリスでは
EU・英国の製品性能規制
に加えて
地域の煙規制
があります。
イギリスでは薪そのものにも規制がある
イギリスの特徴は薪ストーブ本体だけでなく燃料についても規制があることです。
イングランドでは家庭用燃料として販売される薪について「Ready to Burn」という制度があります。
英国政府は少量販売の薪について水分量20%以下の薪を認証する仕組みを設けています。
薪販売に関する政府ガイダンスでは2立方メートル未満の薪についてReady to Burn認証が必要とされています。
そのため
ストーブ
だけではなく
薪
も規制・品質管理の対象になっています。
日本の規制は何が中心なのか
では、日本ではどうでしょうか。
日本の薪ストーブに関する法規制では消防法関連法規と建築基準法関連法規が重要です。
環境省の薪ストーブに関する資料では
「薪ストーブに係る法規は、主に消防法関連法規と建築基準法関連法規がある」
と説明されています。
日本では薪ストーブそのものの環境性能だけを見るのではありません。
特に
- 火災
- 可燃物との距離
- 煙突
- 床・壁・天井
- 設置方法
などが重要になります。
日本では火災予防条例が地域ごとに関係する
消防庁によるとストーブなどの火を使用する設備・器具については、消防法令に基づき各市町村が火災予防条例によって位置、構造、管理、取扱いなどを規制しています。
つまり、日本では
国の法律だけ確認すれば終わり
ではありません。
実際に薪ストーブを設置する場合は設置場所の自治体の火災予防条例などを確認する必要があります。
日本では2023年に薪ストーブの火気設備基準が見直された
薪ストーブについて重要な変化があります。
消防庁は2023年、薪ストーブや炭焼き器などの固体燃料を使用する火気設備についてこれまでの規定が石油やガスなどの精製燃料を前提としていたことを踏まえ薪や炭などの天然固体燃料にも対応できるよう基準を整備したと説明しています。
消防庁の資料では従来の一般的なストーブの規定では周囲に1~1.5mの離隔距離を確保する必要があり薪ストーブを設置できる場所が限られる状況があったことも説明されています。
そこで防火上の安全措置が講じられた薪ストーブについて基準が見直されました。
これは日本の薪ストーブ規制を考えるうえで重要な変更です。
日本の煙突にも法律上の基準がある
薪ストーブでは本体だけでなく煙突も重要です。
建築基準法施行令第115条では建築物に設ける煙突について構造基準が定められています。
例えば、煙突の屋上突出部は屋根面から60cm以上とすること煙突の先端から水平距離1m以内に建築物がある場合の高さなどが規定されています。
また煙突は可燃材料から一定の距離を確保することなども規定されています。
つまり日本では
薪ストーブ本体+煙突+建築物
を一体として安全性を考える必要があります。
日本の規制で「離隔距離」が重要な理由
薪ストーブは非常に高温になります。
そのため壁、天井、床などの可燃物に熱が伝わることを防ぐ必要があります。
国土交通省は薪ストーブ周囲の遮熱板について建築基準法への不適合が確認された事例を公表しています。
この事例では薪ストーブ周囲の遮熱板について建築基準法の告示に定められた仕様と異なる施工が行われていました。
このことからも日本では薪ストーブの設置工事そのものが重要な法規制の対象になることが分かります。
日本のPM2.5環境基準と薪ストーブ規制は別の話
日本にもPM2.5について環境基準があります。
環境省によれば、PM2.5の環境基準は
1年平均値15μg/m³以下
かつ
1日平均値35μg/m³以下
です。
しかしこの環境基準は大気環境についての基準です。
EUのEcodesignにおける薪ストーブ本体のPM排出基準とは制度の目的と測定対象が異なります。
ここを混同してはいけません。
EUではストーブ製品の排出性能そのものを規制しています。
日本のPM2.5環境基準は一般環境の大気中濃度に関する基準です。
日本の大気汚染防止法は一定規模以上の施設が中心
日本の大気汚染防止法では一定規模以上の施設が「ばい煙発生施設」として規制対象になります。
環境省はボイラー、ガス発生炉、加熱炉などについて規模要件を定めています。
また、環境省は大気汚染防止法について一定規模以上の施設を対象として排出基準を設けていると説明しています。
したがって一般家庭の薪ストーブについてEUのEcodesignのような全国一律の製品排出規制と同じ仕組みとして理解することはできません。
日本では家庭用の小規模燃焼機器について環境省が低NOx型小規模燃焼機器の推奨ガイドラインを設けていますがこれは「法規制」ではなく優良な機器を推奨する制度です。
欧州と日本の大きな違い①「ストーブ本体の環境性能」
欧州ではEU Ecodesignによって薪ストーブなどの製品について
- エネルギー効率
- PM
- CO
- OGC
- NOx
などを数値で評価しています。
これは製品そのものの環境性能を規制する仕組みです。
一方、日本では薪ストーブについて消防・建築関係の安全基準が重要な位置を占めています。
したがって規制の中心が異なります。
欧州と日本の大きな違い②「既存ストーブ」
ドイツでは既存の古い個別室暖房設備について一定の排出基準を満たさない場合に粉じん削減装置の設置や使用停止を求める移行制度があります。
これは非常に明確な既存設備対策です。
日本の薪ストーブ規制では設置時の建築・消防上の安全性が重要です。
したがって
「古いストーブを環境性能の面から更新させる」という欧州の制度
と
「安全な設置・使用を確保する」という日本の制度
には違いがあります。
ただし日本でも地域条例などによって具体的な扱いが変わるため「日本では既存ストーブに何の規制もない」という意味ではありません。
欧州と日本の大きな違い③「地域による規制」
欧州では国によって規制が違います。
ドイツでは1. BImSchV、イギリスではSmoke Control Areaなどがあります。
フランスでも薪暖房について環境性能の高い機器を対象とした制度があり政府の暖房支援制度では「Flamme verte 7★」などの性能基準が利用されています。
例えばフランス政府の暖房支援制度では薪を使用する独立型木質暖房機器について一定の効率とCO濃度、またはFlamme verte 7★などの基準が示されています。
つまり
「ヨーロッパ=一つの規制」
ではありません。
EU共通規則に加えて各国の制度が重なっています。
日本も「一つの規制」ではない
日本についても同じことが言えます。
薪ストーブの設置には
- 消防関係
- 建築関係
- 火災予防条例
- 煙突関係
- 建物の構造
- 設置場所
など複数のルールが関係します。
消防庁は火を使用する設備・器具について市町村の火災予防条例による規制があることを説明しています。
そのため薪ストーブを設置する場合には全国共通の法律だけでなく設置する自治体の条例を確認することが必要です。
欧州の規制から見える薪ストーブの変化
欧州の規制を詳しく見ると薪ストーブは単なる「昔ながらの暖房器具」ではありません。
現在は
燃焼効率
排出物
製品性能
燃料品質
地域の大気環境
などを総合的に考える暖房機器になっています。
特にEUのEcodesign規則は薪ストーブを製造・販売する段階から環境性能を求める制度です。
そしてドイツでは既存設備にも排出基準が適用される仕組みがあります。
イギリスでは地域の煙規制とストーブの認証制度が組み合わされています。
日本の薪ストーブは「設置」が特に重要
日本で薪ストーブを設置するときに重要なのは単にストーブ本体の性能だけではありません。
例えば
- 壁との距離
- 天井との距離
- 床の保護
- 遮熱板
- 煙突の構造
- 煙突と可燃物の距離
- 屋根からの煙突の高さ
- 地域の火災予防条例
などを確認する必要があります。
建築基準法施行令第115条には煙突について具体的な構造基準があります。
また消防庁も薪ストーブについて防火上の安全措置を考慮した基準整備を行っています。
「欧州の薪ストーブは規制が厳しい」は半分正しい
欧州の薪ストーブについて
「ヨーロッパでは環境規制が厳しい」
という説明を見かけることがあります。
これは一定の事実を含んでいます。
EUでは薪ストーブなどについてPM、CO、OGC、NOx、効率などを対象とするEcodesign規則があります。
しかし
「欧州では薪ストーブが自由に使えない」
という意味ではありません。
ドイツ、フランス、イギリスなどそれぞれの国で薪ストーブは現在も使用されています。
規制の目的は薪ストーブそのものを一律に禁止することではなく製品性能や排出、火災安全、地域の大気環境などについて一定の基準を設けることです。
「日本は規制がない」も正しくない
逆に
「日本には薪ストーブの規制がない」
という説明も正確ではありません。
日本には消防法令、火災予防条例、建築基準法などによる規制があります。
特に煙突や可燃物との離隔、遮熱などについては具体的な基準があります。
2023年には薪ストーブなどの固体燃料火気設備について消防関係の基準も見直されています。
したがって日本でも薪ストーブは法律や条例の対象となっています。
欧州と日本の違いを一言で表すと
ここまでの内容を整理すると次のように考えることができます。
欧州
「どのような性能のストーブを市場に出し、どのような排出を認めるか」
という製品・環境面の規制が明確です。
EUではEcodesignによって効率やPM、CO、OGC、NOxなどを数値化しています。
さらに国ごとに
- ドイツの1. BImSchV
- イギリスのSmoke Control Area
- フランスの環境性能制度
などがあります。
日本
「どのように安全に設置し、火災を防ぎ、煙突を安全に施工するか」
という消防・建築面の規制が重要です。
建築基準法施行令には煙突の構造基準があり消防関係では市町村の火災予防条例が関係します。
まとめ
欧州と日本の薪ストーブ規制には、明確な違いがあります。
EUでは薪ストーブなどの固体燃料局所暖房機器についてEcodesign規則によってエネルギー効率、PM、CO、OGC、NOxなどの基準が設定されています。これらの要求は2022年1月1日から適用されています。
つまり欧州では
「どれだけ効率よく燃えるのか」
だけでなく
「どれだけ排出するのか」
がストーブ製品の重要な性能になっています。
さらにドイツでは1. BImSchVによって薪ストーブなどの固体燃料設備について排出基準が設けられ、古い設備についても移行規定があります。
イギリスではSmoke Control Areaがあり地域によって煙の排出が規制されています。
また、薪などの燃料を使用する場合にはDefra approved applianceが必要になる場合があります。
一方、日本では薪ストーブの設置・使用に関して、消防法令、火災予防条例、建築基準法などが重要です。
消防庁によれば薪ストーブなどの固体燃料を使用する火気設備については2023年に防火安全上の基準整備も行われました。
また、建築基準法施行令では煙突の高さや構造、可燃材料との離隔などが定められています。
このように比較すると
欧州は「環境性能・排出」に関する規制が明確
日本は「設置・防火・煙突」に関する規制が重要
という違いが見えてきます。
ただしこれは「欧州は環境規制、日本は安全規制」と完全に二分できるという意味ではありません。
欧州にも建築・消防・煙突に関する規則があり日本にも大気環境に関する法律があります。
重要なのは薪ストーブの規制は一つの法律だけで決まるものではなく、「製品」「燃料」「排出」「設置」「煙突」「地域」のそれぞれに異なるルールが存在しているということです。
薪ストーブ文化が長いヨーロッパでは昔から使われてきた薪ストーブをそのまま残すだけではなく燃焼技術や排出性能を規制によって改善してきました。
一方、日本では住宅に薪ストーブを導入する際、消防・建築・煙突などの安全性を確保することが重要です。
薪ストーブを長く安全に使うためには単に「海外のストーブだから安全」「最新型だから問題ない」と考えるのではなく設置する国と地域の法律、メーカーの施工基準、煙突の基準、燃料の条件を確認することが必要です。
参考資料
- EUR-Lex|EU Regulation 2015/1185(固体燃料局所暖房機器のEcodesign規則)
- European Commission|Local Space Heaters
- ドイツ連邦法令|1. BImSchV 第26条
- ドイツ連邦法令|1. BImSchV 型式試験基準
- GOV.UK|Smoke control area rules
- DEFRA|Open fires and wood-burning stoves
- 総務省消防庁|薪ストーブ等の固体燃料を用いた火気設備に関する基準見直し
- e-Gov法令検索|建築基準法施行令 第115条(煙突)
- 環境省|微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報
- 環境省|大気汚染防止法の対象となるばい煙発生施設



